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5.ザ・ピーナッツ(下)

ぼくはこの「可愛いピーナッツ」を中古レコード店で買い、さっそく聴いた。第1面が終わり、第2面にレコード針を落とす。ノイズの後、「コメ・プリマ」が始まる。その冒頭部分を聴いただけで、「これはいい曲なのではないか」という予感がした。はたして、予感は適中した。すばらしい曲だったのである。ぼくは曲が終わった後も、しばらく呆然としていた。それほど感動したのだ。その後、何度となく、この曲を聴いた。しかし、やはり、そのたびに胸にこみ上げるものがある。聴かずとも、この曲を思い浮かべただけで涙が出そうになることさえある。

「コメ・プリマ」は二人のアカペラの輪唱から始まる。次第にオクタ−ヴを下げていき、最後に二人揃って言う「コメ・プリマ!」をきっかけにしてシックスジョーズが演奏を開始する。このときに感じる何ともいえない胸のときめきは言葉ではとうてい表現しがたい。彼女らのユニゾンの完璧さ。ユニゾンであるにもかかわらずソロであるかのごとく、しかし、ユニゾンがこれほど完璧でなければ決して生み出されない美しい響きがある。そのユニゾンがデュエットに移るときの美しさには、もういてもたってもいられない。全身が総毛立つ思いがする。彼女らは神秘的だ。もともと一卵生双生児というだけでも神秘的なのであるが、それだけでは説明のつかない神秘性が彼女らにはある。ちょうどミューズの神が彼女らに乗りうつっているかのような神がかったものを彼女らには感じる。そして、この一糸乱れぬハーモニーの中に彼女らの強いパッションを感じる。必死で自分の思いを伝えようとしているその切羽詰まった訴えかけにぼくは最も心打たれる。

彼女らについて語られるとき、必ずでてくるのが「ハーモニーの完璧さ」である。ぼくもそう思う。けれども、ぼくは彼女らのパッションにこそ強く心打たれるのである。「コメ・プリマ」に限らず、彼女らの歌うフレーズの一つ一つには強い思いがこめられている。それは「心の窓にともし灯を」のようなスローな曲とて例外ではない。ぼくはそうした思いに共感し、感動するのだ。もし、それがなければ、たとえハーモニーが完璧であっても、ぼくにはせいぜいBGMくらいにしかきこえないだろう。とりわけ、この「コメ・プリマ」には火のように燃え立つパッションを感じる。

シックス・ジョーズの演奏もすばらしい。間奏のサックスのなんと泣かせることか。いったいだれが吹いているのだろう。シックス・ジョーズのサックスといえば松本英彦くらいしか思い浮かばない。しかし、この頃、彼は在籍していたのかどうか、それすら知らないのである。ジャズファンの方が聴いたらお笑いになるかもしれないが、ベースが渡辺晋で、ピアノが宮川泰で...ぐらいしか知らないのだ。実に情けない。

この「コメ・プリマ」のオリジナルを聴きたくなり、ぼくは中古レコード店を何軒かはしごして、ようやく見つけた。日本でも発売されている。

「コメ・プリマ」(C/W「コンダンナミ」)日本グラモフォンDP−1112、唄:トニイ・ダララ、演奏:カンピオニ楽団

である。ライナーノーツには当時イタリアで50万枚以上の売り上げを記録して、イタリアレコード界の記録を更新しているとある。確かに悪くはないが、ザ・ピーナッツの歌唱を聴いた後では極めて色あせてみえる。「スローテンポのロックン調リズムにのせて唄います。」と書いてあるが、「ロックン調リズム」というのは何のことかよくわからない。

ここで、改めて痛感するのが編曲家・宮川泰の偉大さである。(もちろん、彼は作曲家としても偉大である。それはまた後日書こうと思う。)彼はトニイ・ダララの「コメ・プリマ」をこんなにもすばらしいザ・ピーナッツの「コメ・プリマ」にしてみせたのである。そういう意味で、もう一枚だけ彼女らのレコードをとりあげよう。

「ジングル・ベル」(C/W「サンタクロースがやってくる」)キング EB−395 訳詩:音羽たかし、編曲:宮川泰、演奏:シックス・ジョーズ

ぼくはこれほど興奮して「ジングル・ベル」や「サンタクロースがやってくる」を聴いたことはない。

12.1.25


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