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25.石津謙介と「エレキの若大将」

「エレキの若大将」は、ぼくの人生に多大な影響を与えた映画である。

とはいえ、これが封切られた頃、ぼくはまだ一歳にも満たない赤ん坊であったから、もちろん、リアルタイムで観たわけではない。しかし、小学校六年生のとき、偶然、この映画をテレビでみて、完全に夢中になってしまったのある。

実際、映画をみた数日後には、親にねだって加山雄三のベストアルバムを買ってもらった。これが、ぼくが買ってもらった初めてのレコードである。さらに、恥ずかしいことを告白すると、小学校の卒業文集に「加山雄三の大ファン」と書いたのを覚えている。(ちなみに当時は、ピンク・レディー旋風が世の中を席巻していた頃である...)

要するに、ぼくは「エレキの若大将」にイカレてしまったのだ。子供心にも、あの映画が描く世界は、おそろしくカッコよかった。

アメリカナイズされた翳りのない明るさ。美しい大学を舞台に展開する楽しげなキャンパスライフ。アメラグ(アメフト)をやり、エレキを弾く若大将。星由里子など、ソフィスティケイトされたガールフレンド。

「自分も、あんな大学生活を送ってみたいなあ」と、単純なぼくは、実に軽薄な憧憬を抱いたのであった。

もちろん、この頃の「憧憬」は、ほんとうに漠然としたものにすぎなかったし、今から思うと、ほんの一過性のものだったようにも思える。

ところが、この漠然とした憧憬は、しばらくの「潜伏期間」をおいて、かなりの具体性を備えた興味、希望として、自分の中にあらわれた。

大学進学への希望、アイビーファッションへの傾倒、エレキサウンド、特にビートルズへの興味...。


それを自覚したのは、確か、中学三年生くらいの時であった。

いわゆる「アイビー」は、米国東部のアイビーリーグを起源とするファッションであるが、かなりドレス・コードが厳しい。ファッションを無個性にしながらも、自分自身の内面を磨く。質実剛健な伝統を重んじ、奇を衒わない。TPOに合致した服装を選び、場の雰囲気を損なわない。アイビーファッションのカッコよさもさることながら、そういう、ストイックで奥が深い、日米が共通して重んじる一種の普遍的な価値を基礎としているところにぼくは心惹かれた。

「ポパイ」(平凡出版)、「MEN'S CLUB」(婦人画報社)を欠かさず読み、「バイブル」と呼ばれていた「TAKE IVY」(婦人画報社)も手に入れて、60年代初頭のアイビーリーグのドレス・コードを暗記するくらい、繰り返し読んだものだ。そして、VANの尾錠付きチノーズをはき、霜降りグレーのスウェットシャツを着て...。

このアイビーファッションを日本に紹介したのは、石津謙介が創業したVAN(ヴァン)ヂャケットであるが、「エレキの若大将」の衣装はすべて、VANが提供したらしい。ヴァン・ヂャケットが初めて百貨店に店舗を持ったのが阪急百貨店だったという「縁」が、その理由のようだ。(ご存知の通り、阪急百貨店も、東宝も、『阪急・東宝グループ』の企業である)

「アイビー」は、若者の服装と思われがちである。しかし、そうは思わない。
「アイビーファッションは、単なる服飾ではない。それは、ライフスタイル全般のことを指す」という石津謙介の言葉は、けだし、名言である。

もはや、ぼくは若者とはいえない年齢になってしまった。けれども、絶えず、「アイビー」を意識している自分に気づく。

for the young and the young-at-heart

最後になってしまいましたが、石津謙介氏のご逝去を悼み、心から、ご冥福をお祈りいたします。

17.5.27



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