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14.岩渕リリについて

岩渕リリについてはあまり世間で知られていないように思う。70年代初めに活動していたヤマハの女性フォーク歌手であるけれども、「岩渕リリ」と言ってリアクションが返ってきたことは残念ながらいまだかつてない。

ぼくが岩渕リリと出会ったのは中古レコード店で何となく買った「日曜日の午後」を通してであった。ぼくにとっても彼女は全く知らない歌手だったのである。そのときはさしたる印象もなかったが、その何年か後にこれまた何となく買った彼女のLP「あなたを夢みて/サルビアの花」を聴いてたちまち彼女に夢中になった。

このLPのジャケット写真(裏)における彼女はまさしく「70年代のお姉さん」である。丈の異常に短いベスト、幅の広いベルトに巨大なバックル、裾の広がったラッパズボン。そして、ロンドンブーツ。実にラジカルである。これほどファッションがラジカルだった時代が他にあるだろうかとさえ思う。

今、渋谷などに行くと70年代風のファッションを見かけるが、実際の70年代の服装とはやはり違う。ラジカルさ、思想性、そういったものが希薄なのである。よく言われることだが70年代の服装、さらにいえば、当時のカウンターカルチャーはたぶん、アメリカの反ベトナム戦争運動とか、パリの学生革命とかの影響を受けている。日本でも今よりは明らかに反権力的な時代だったと思う。ぼくの実家のすぐ近くに同志社大学があるが、子供の頃は今出川キャンパスの中に髪の長いギターケースを持った学生がいっぱいいたし、連日、家の前を「アンポフンサイ、トウソウショウリ」と呪文のように唱えながら行進する学生の集団があった。それが「安保粉砕、闘争勝利」であると知ったのはかなり大きくなってからである。小学校にいってからもとても教師とは思えない服装をしている人がいた。(後で聞くと全共闘あがりだったらしい。)子供だったから、思想とか、時代背景とかは全然わからなかった。しかし、子供心にも何か熱っぽいものを感じていた。それは確かである。もちろん、当時の「若者文化」は海外のカウンターカルチャーをファッションとして輸入したものだという見解が強い。だとしても、あの服装をする時代の必然性はあったと思う。しかし、今、その必然性はないのではないか?ぼくが現在の70年代風ファッションにラジカルさ、思想性の希薄さを感じるのはおそらく、その点に理由があると思う。

岩渕リリの声は美しい。それだけでなく、彼女は歌詞以前に声そのもの、そして、その独特の節回しだけで泣かせる。何げない声のトーンの変化に何ともいえないセンチメンタルな感情の発露が感じ取れるのである。例えば、同じく美声を持つ本田路津子と比べた場合、この点においてやはりぼくは岩渕リリに軍配をあげる。

彼女のレコードは中古レコード店でもあまり見かけない。プレス枚数自体が少なかったためであろうか。しかし、今回の引っ越しが終わって渋谷の中古レコード店を物色していたら、彼女の「隣の男の子」があるではないか!この曲は有馬三恵子の歌詞もすばらしい。「女の子の気持ちを 知る日がきたなら いしだたみのこの町しのんでほしいの」というフレーズは実に泣かせる。

12.4.8

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